+
■ 和瀬の大波

-- 台風18号は、奄美の西側を通って北へと登っていった。直撃は回避できたものの、台風の中心に向かって吹きこむ風は太平洋に面した集落を襲い続けた。特に南や東に面した集落は、海から襲ってくる風にさらされたことだろう。海のすぐそばまで山が迫る奄美大島は、各々の集落は島のへりに寄り添うように居を構えている。台風からの風は、山に阻まれる時もあれば何ものにも邪魔されない時もある。一つの島にいながら、風の当たり方は全然違う。台風18号は、16号の時とは全く逆の風が吹いた。「16号が凄かったや」という所もあれば「18号が凄かったど」という所もある。あるいは「どっちも凄かった」という風の流れが良過ぎる所もあるだろう。我が家がある名瀬の東シナ海側は、今回は「特にそんなには・・」だった。だが、同じ名瀬市でも太平洋側の小湊・大川は「とんでもない風」だったそうだ。そんな台風18号が奄美を通過中の6日午後、まだ暴風域を抜けてはいなかったが、母が出勤するというので一緒についていった。こんな日に子供のいない学校に出かけて何するの?と思いつつ、仕方ないので住用の市まで向かった。途中、長い長い和瀬トンネルを過ぎたところで視界に飛び込んできた大波に目が釘付けになった。村を襲わんばかりの大きな波。「すげー」と思わず声がもれる。長い長い直線道路を下りながら慌ててカメラを取り出し、助手席から写真を撮った。そうこうしながら時折吹く突風に用心しつつ1時間かけてたどり着いた学校。学校のある市(いち)は北向きだからかそれほど風はなかったが、掃除しようにもまだ雨風は止んでないから二度手間になるし、仕事しようにも停電でままならないし、結局何もすることがなく茶を飲んで帰ってきた。意味ねー。市から名瀬に帰ってくると出かける前よりも風が強くなっていた。ようやく名瀬も吹き出したか。土砂降りの雨と吹き付ける風の中で真っ暗な家に帰り着き、とりあえず無事に帰りついて良かったとホッとした。


このページは、奄美の写真家「別府亮」の撮影日記的な奄美の記録→『奄美/365』の1ページです。
※写真等すべての無断利用を禁止します。写真の貸出についてはメールにてお問い合わせください。
メインホームページ→