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■ 器がたてる音

-- 笠利町にあるカフェ「夢紅」には、数年前にオープンした頃からよく通っている。パスタとコーヒーのお店なので、パスタとコーヒーが好きな僕には嬉しい場所だ。15日から約1週間、クリスマス前の『器展』が始まったので、頼まれていたポストカードを持っていきながら初日に訪ねてみた。店内に入ると、カフェの隣のスペースにあるギャラリーから陶器を弾くような音が聞こえてきた。ティンッティンッティティンッ・・、とたくさんの音が飛んでいる。風にゆられて器どうしがぶつかり、それで音がなっているのかと最初は思っていた。だが、風は吹いておらず、そして重なりあっていない器からも音は聞こえてくる。不思議に思っていたが、理由を聞いて「ほぇ〜」とうなった。器に無数に入ったヒビ割れのような模様。それを「貫入:かんにゅう」というのだが、その貫入が入る音だというのだ。窯から出したばかりの器たちが、自らの体に貫入を刻み込みながら心地よい音をたてている。「私はこの音が好きなの」と器を並べながら奥さんがつぶやいたが、「僕もこの音は好きだ」と初めて聞く音に共感をおぼえた。たくさんの見えない小人たちが器をたたいて演奏している。クリスマスを迎えるにぎやかな雰囲気が頭に浮かんだ。またこの音を聞きにきたい、と思った。


このページは、奄美の写真家「別府亮」の撮影日記的な奄美の記録→『奄美/365』の1ページです。
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