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■ 踏みつけられたキビ畑のかたわらで 9/6

--およそ一昼夜に渡って吹き荒れた台風14号。大きな姿をしていたので、暴風域から抜けた翌朝もまだ空には灰色の雲が広がっていた。今頃、九州で吹き荒れているんだろうなぁと思いつつ、家の壁や窓の潮を洗い流して簡単に台風の後片付けをした。停電で何も出来なかった分の仕事をパソコンでせっせとやっていると、プリンタが動かなくなっていることに気が付いた。エラーランプが点灯して操作を受け付けてくれない。今年の夏はパソコンが壊れ〜、カメラが壊れ〜、そしてプリンタまでも。そろそろ次は何かと恐怖になる今日この頃だ。

--夕方から用事を兼ねて笠利一帯をまわってきたが、スクスクと伸び伸びと成長していたサトウキビ畑は一夜のうちに別世界へと姿を変えていた。台風前日から強風を受けて斜めにはなっていたものの、台風後の姿は横倒しと表現するにはあまりにも軽過ぎる状況だった。まるで何かに押しつぶされたかのように、人の背丈よりも高かったキビ達が足下でクシャクシャになっていた。畑を足げにしながらあの風達はいったい何と戦っていたのだろう。戦火に巻き込まれたようなキビ畑のかたわらで、「また立ち上がれよ」と強く願わずにはいられなかった。

--日が沈む頃になって、ようやく山の向こうに太陽が顔をだした。キビ畑の広がる太平洋側から低い山を渡り、東シナ海側へと向かった。赤木名の海岸には台風が残していった風がまだ吹いており、おだてられた波が岩壁を白く洗っていた。大気に潮が舞っていたのだろう。日没を過ぎても空は赤々と燃え、闇が訪れるまでの間ずっと色を失わずにいた。台風の最後の雲が、ようやく奄美から離れようとしていた。

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このページは、奄美の写真家「別府亮」の撮影日記的な奄美の記録→『奄美/365』の1ページです。
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