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■ 雨上がりの夕暮れ 4/26

--朝から激しい雨が降っていた。こういう日はプリンターと格闘するのに向いている。「写真撮りにいこーぜ」という外からの誘惑が少ない分だけ、室内での作業に熱中できるから。小雨ならカメラ持って出れば何かはあるのだが、大雨だと相当気分が高揚していないと無理だ。雨に打ち勝つには、濡れても耐えられるだけのテンションが必要である。

--雨は午後3時をまわっても降り続き、ようやく上がった頃には外はもう昼から夜へと移動するところだった。最近、生活彩館にオリジナルプリントを置かせてもらっているので、数点を納品しながら市内に出かけた。帰ってくると、もうほとんど夜。手を振り回せば黒い霞が引っかかりそうな光の中で、「暗い」とわかっていながらもカメラを構えてみた。構えてみると暗くてもそれなりに楽しかったりして、あれこれ撮っていると車道側のユリに気が付いた。時々通る車のライトに、白いユリが浮かび上がって見えたのだ。「こいつはいいや」とさっそく照明付きの撮影に切り替えた。といっても肝心の照明は時々通り過ぎる車のライト。気まぐれな照明さんを待ってる間に構図を決め、あっという間に走り過ぎる照明さんと呼吸を合わせてシャッターを切る。まあ、こっちは呼吸を合わせているつもりでも、向こうはもちろんそんなこと構っていない。勝手な共同作業に今夜は計6台の車にお付き合いいただき、2台の車が前と後ろからユリを照らしてくれる絶妙な掛け合いを見せてくれた。感謝。

--というわけで、久々に長々と指を走らせていたら危うく肝心なことを伝え忘れるところだった。それはユリの花を撮っている時のこと。暗く沈んだ川向こうの山から甲高い声が響いてきたのだ。その澄んだ音に心は一瞬にして高鳴った。「おお!やってきたか!!」と。振り返り、立ち上がり、川の近くまで歩みよって、もう5度その声に聞き入った。そう、初夏を告げるアカショウビンが今年も島に渡ってきたのだ。

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このページは、奄美の写真家「別府亮」の撮影日記的な奄美の記録→『奄美/365』の1ページです。
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