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■ ガジュマルの種の不思議 6/16

--近所の歩道で、雨に打たれたガジュマルの実が、辺りにいっぱい散らばっていた。うす紅く熟れたガジュマルの実は、指で簡単につぶれるほど柔らかい。好んで踏み歩く人は少ないだろうが、歩道いっぱいに広がっていたので所々つぶれていた。

--奄美でガジュマルを知らない人はいないだろう。体をくねらせ、ひげ根をたらし、周囲を侵略するように成長してゆくガジュマル。島の妖怪「ケンムン」が住む樹とも言われている。そんなガジュマルの子孫繁栄の不思議をひとつ。

--ガジュマルの根元をよく見てみると「あれ、変だ」と思うことがある。こんなにも根元にたくさんの実を落とすガジュマルなのに、この実から芽が出て育っている姿を見ることはまずない。普通の木は、親から落ちた実から子供が育ち、やがて子が親を追い抜いていくものだ。実を落とす木のまわりには、その木の苗木がたくさんあるのが普通だ。なのにガジュマルにはそれがない。もしや実の中に種が入っていないのでは?と疑ってみたが、種はちゃんと入っていた。種はちゃんとあるのに発芽はしない。実に不思議だと思いません?

--この不思議の秘密は、ガジュマルの種の構造にあった。僕も初めて聞いた時には驚いたのだが、ガジュマルの種は薄い膜で覆われているらしいのだ。その膜が破れなければ発芽はしない、と。その話を聞いた時、頭にフラッシュのように次々と浮かびあがったのはガジュマルが発芽している場所であった。親の根元では発芽しないガジュマルだが、高い木の上や屋根の上など、種が落ちるはずのない場所で育っている姿はよく見かける。あれはもしかして、ああ、なるほどそうか。鳥が実を食べ、消化の過程で種の膜が破られ、木の上にフンと一緒に蒔かれる。だからあんな所でガジュマルは育っているんじゃないか、という推測にたどりついた。

--この推測が正しいのかはわからないが、ガジュマルの種に膜があるとしたらなかなか筋の通った話だと思う。はてさて真実は、粒粒がいっぱい含まれたあの鳥のフンに隠されている。

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このページは、奄美の写真家「別府亮」の撮影日記的な奄美の記録→『奄美/365』の1ページです。
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