■ 草むらの名脇役 2006/10/23
--太陽が山の端にかくれた後も、空にはしばらく色が残ったままだった。いや、むしろ色づきそのものは、太陽が見えていた時よりも広がっていた。いつもたいていそうなのだが、僕は夕陽を見送ってもすぐに帰ることができない。空に残った太陽の匂いとでも言おうか、雲を照らす夕色が消えてしまうまで、いつもなかなかその場を離れられないでいた。
--とりわけ今日は、あの夕雲の柔らかい色を写真に撮りたくて、足下の草むらにしゃがみこんだ。まわりくどい話だが、草に向けてピントを合わせたなら、きっとあの夕色がうまく写ってくれる気がした。そうして秋の形をした草の先端にレンズを向けると、ひとり何かがいるのが目に入った。
--とまあ、こういう過程を経て、今日の写真に彼は写ることとなった。ピントは合っているけれども、あくまでも名脇役として。