奄美/365
 手久津久のガジュマル 2008/8/22

--最後の最後に事件は起きた。

--道路を走っていると「ガジュマルはこちら」という小さな看板を見つけた。誘われるように小道に入ってゆくと、こんもりとした森を指して再びガジュマルはこちら、と。車を止め、カメラを持って森に頭をつっこむと、すぐ目の前に大きなガジュマルの姿があった。なんて素敵なガジュマル。ゆるやかな斜面を登りながらガジュマルへと近付いてゆく。その時、目の前を白いモノがふわりと横切った。あ、オオゴマダラ・・。オオゴマダラは実に軽やかにガジュマルの前にちょこんととまった。まるで、一緒に撮ってと言わんばかりに。

--素敵なガジュマルと初めて見るオオゴマダラにテンションは上がっていたかもしれない。来たときよりも浮かれたステップで斜面を下りていたのだろう。さあ帰るぞ!と歩き出した数歩目、左足がガジュマルの根っこに引っかかり、体勢を立て直そうと踏ん張った右足が滑った。スッテン。この形容詞がベストマッチだろう。体は重力に引っ張られ真横に倒れてゆく。とっさに受け身をとろうと手が動いた。瞬間、視界にカメラが入った。あ!

--気付いた時には、カメラを守るように右手は曲がり、代償に右肘が地面へと打ち込まれていた。あいたたた。やっちまった。起き上がりながら一番に気にしたのは服が破れてないか。土で汚れていたが、払えば問題なかった。ザッと体を見渡すが、足のすり傷も軽くホッとひと安心。良かったと車に乗り込もうとして右手から血がしたたっていることに気付いた。わ!

--飛行機の時間が迫っていたけど、念のために病院に寄って消毒してもらった。時間が経つにつれ一番痛み出したのは右肘だった。ズンと深い痛み。動揺は隠せず、ガソリンを入れ忘れてレンタカー店に到着。距離払いは高くついたけど、正直気にもならなかった。痛みと心配で頭はいっぱいだった。

--腕の痛みがピークに達したのは夜。家に帰り着くまでは普通に曲げ伸ばしできていた腕が、痛みでもう曲がらなくなっていた。コブもできてふくらんでいる。触れるだけで脳天に突き抜けるほど痛い。うつぶせでベッドから手を垂らして寝たが、あまりよく眠れなかった。

--翌朝、どうにもこうにもやっぱり痛いので近所の整形外科を訪ねた。レントゲンを撮って調べてもらうと剥離骨折していた。ただ、痛みは続くが剥離骨折の部分は関節にも影響無いしそう問題ないとのこと。問題は意外に深かった傷口で、そこからバイ菌が入ると関節が動かなくなったり手術のおそれもでてくるとのことだった。通院して毎日消毒という診断がくだった。

--濡らさない汗かかない運動しない。これが三原則。関節が動かなくなると非常に困るので、全てに優先して治療につとめた。しばらく腕が曲がらなかったので左手でご飯を食べていたが、だいぶ上手に箸が使えるようになった頃、日に日にゆっくり曲がってきた右手がやっと顔に届いた。事件から約1週間、両手で顔が洗えるようになった。ちょうど傷口もふさがり、病院からも卒業した。

--8月22日現在では、普通にカメラも構えられるし写真も撮れるようになった。まだ素早く動かしたり力を込めると痛むのだが、内出血のコブもだいぶ小さくなったし完全回復は時間の問題だろう。油断して時々コツンと肘をぶつけて奇声を上げることもある。とりあえずは激しい運動は控えてゆっくりと養生していこう。

--皆様には大変ご心配をおかけいたしました。励ましのお言葉、本当にありがとうございます。別府亮、大丈夫です。この夏はおかげでオリンピックを堪能できたなぁ、と今はしみじみ思うことです。

--また行くぞ!喜界島。今度はスニーカーで!!(→8月5日の写真をご注目)。

↑EOS 5D + SIGMA8mm ↓EOS 5D + EF16-35mm II

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