真夜中に目覚める龍 2017/5/8


--昨夜10時半に眠りについた時、もし明日、自然と早く目覚めたら作戦を決行しようと思っていた。パチッ。目を開くと辺りはまだ真っ暗。携帯を探して時刻を確認する。午前2時半。バッチリだ。さあ行こう。円のかがんばなトンネルへ。

--早朝の撮影はメガネで臨むこともあるけれど、万全を期したい時はコンタクトだ。バッチリと身支度を整え、念のためにダウンも羽織る。外に出ると空気はヒンヤリと冷たかった。そして満天の星。雲ひとつ無い好条件。期待できる。まだ山の上に輝く月を見ながら車を走らせた。

--龍郷湾に沿って県道を進み、安木屋場トンネルを抜けて東シナ海へ出ると、正面に月が見えた。ラグビーボールのように少し楕円形をした十二夜の月。横に明るく木星が輝いている。高まる期待。円に着くと、かがんばなトンネルの周りにも雲は無く、水平線まで晴れ渡っている様子だった。

--予定より早く着いたので、円集落を過ぎてトンネルを抜け、広がる東シナ海で月を見た。そして再びトンネルを戻り対岸の撮影地へ。龍の瞳に夕日が輝く場所で、今宵は月の光を待つ。

--真っ暗な現場。車のライトを消すと、足元も見えない。カメラバッグを置いて少し動くと、バッグを見つけるのも難しかったほど。もう一人やってきた方と二人、お互いの顔も見えない中、沈んでいく月を見守る。

--やがて月はトンネルの岩陰へと姿を隠し、完全に見えなくなった。夕日の時と同じならココでいいかなと思う場所で待ってみたものの、姿を現さない月に気持ちが焦れる。実際、太陽の時も焦れったいほど待つのだが、待っている間に月がトンネルを通り過ぎてしまっては大変だ。今宵の同志と一緒に右へ左へ動いて、トンネルの中に月を探した。

--「あ!あれ、もしかして月?」と、ほのか過ぎて確信できないほど微かな赤い光が見えた。三脚を移動してシャッターを切る。ああ、月だ。肉眼ではギリギリ何とか感じられるほど微かな赤い月。望遠レンズを通した光はもっと弱く、今さらピント合わせはできない。さっき岩陰に隠れる瞬間にマニュアルで合わせておいたピントを信じて、祈る気持ちでシャッターを切った。5秒から10秒のシャッターが切れたのはわずか数回。数少ないチャンスだけに、とにもかくにもまずは、龍の瞳に月が入る姿を写し撮れてホッとしました。

--月没後、即席の同志と挨拶を交わし、車を見送りながらふと周りを見ると、円集落の上空には煌々と夏の天の川が輝いていました。まだまだ季節が先だと思っていた天の川も、明け方近くにはもう天高く昇ってきているんだな。興奮冷めやらぬ体を朝の冷気でさましながら、そのまま海辺で天の川を撮り続けました。夜明け前の薄明かりが、星を空に隠してしまうまで。

撮影地「円(えん)」


このページは、奄美の写真家「別府亮」の撮影日記的な奄美の記録→『奄美/365』の1ページです。
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